ブログ

植木屋祐のよもやま話〜part16〜

みなさんこんにちは!

植木屋祐、更新担当の中西です!

 

~経済的役割~

造園業は一見すると「庭をつくる職人の仕事」というイメージがありますが、その経済的役割は単に個人の趣味的需要を満たすだけではありません。都市の環境整備、観光地の景観保全、防災インフラの一環、さらには地域の雇用創出といった広範な経済活動に貢献する産業です。

現代社会において、緑化や景観の整備は「生活の彩り」を超えて、環境・健康・資産価値・地域振興に影響する重要な経済要素となっており、造園業はその中心を担っています。本記事では、造園業がもたらす経済的役割を多角的に解説します。


1. 地域建設産業としての裾野の広さと雇用創出

造園業は、建設業の一分野として広く捉えられ、地域密着型の中小企業が多くを占める産業です。公共工事や民間の庭園工事、公園管理、街路樹の整備などを通じて、以下のような経済活動を生み出しています。

  • 職人・技能者の雇用(剪定、植栽、設計、施工、維持管理)

  • 関連産業への発注(苗木、石材、舗装資材、農機具など)

  • 季節労働や高齢者就業など、多様な人材の受け入れ

特に地方においては、造園業は「ローカルに根差した仕事」として若年層や高齢者の雇用の受け皿となり、地域経済の基盤を支えています。


2. 公共投資・都市整備との連動による経済波及効果

公園、緑道、道路植栽、学校の校庭、河川敷緑地などの整備・改修は、造園業の主な活躍フィールドの一つです。これらは国や自治体のインフラ整備予算の中に組み込まれ、公共投資によって地域経済を循環させる効果があります。

  • 国土交通省や地方自治体が発注する緑地管理・景観整備工事

  • 学校や福祉施設の「癒しの空間」としての庭園設計

  • 公共空間のバリアフリー化・防災緑地化工事など

これらは直接的な雇用・消費を生むだけでなく、街の資産価値を向上させ、企業誘致・観光振興にもつながる都市経済施策の一部となっています。


3. 不動産・観光資産としての「緑の価値」を創出

都市計画や不動産開発の分野では、「どのような緑があるか」が街全体の魅力や物件価値に大きな影響を与えます。造園業が整備・維持する緑地空間は、資産価値の向上と観光経済の形成に寄与しています。

▪ 経済効果の例

  • 緑豊かな街並み → 住宅地や商業施設の資産価値アップ

  • 庭園や景観の整備 → 観光誘致(城址公園、寺社庭園、花の名所など)

  • ホテルや結婚式場などのエントランスガーデン → 体験型サービス価値の向上

このように、造園業は景観=経済価値としての再構築を担う重要な職能といえます。


4. 環境・防災・健康分野での経済的インパクト

現代の造園業は「美しさ」だけではなく、「機能性」も重視されています。環境対策や防災、健康寿命延伸といった社会的課題に対し、緑地を通じて経済的効果をもたらすケースが増えています。

  • 屋上緑化・壁面緑化によるヒートアイランド対策(省エネ化)

  • 雨水を貯留・浸透させる緑地による都市型水害の軽減

  • 植物と触れ合うことでメンタルヘルスや認知症予防への効果

  • 地元植物の植栽による生物多様性の保全と環境教育

これらの取り組みは、医療費削減や災害リスク低減といった“間接的経済効果”を持ち、行政・民間企業が注目する投資対象となりつつあります。


5. 後継者育成・技能継承による地域産業の持続化

造園業は、高度な手作業や美意識が求められる職人仕事でもあります。現在、担い手不足が深刻化していますが、それと同時に、技能を通じた新たな教育・産業育成の場としての価値も注目されています。

  • 地元高校や専門学校との連携による技能教育

  • 若手造園家によるデザイン提案やコンペの活性化

  • 女性や外国人技能実習生の受け入れと多様化

これにより、造園業は単に経済を支えるだけでなく、人材育成と地域文化の継承という“非貨幣的価値の創出”を伴った経済活動とも言えるのです。


緑をつくる仕事が、経済の“根”を育てている

造園業は、「緑」という目に見える美しさを提供するだけでなく、雇用・地域再生・資産形成・環境改善・教育といった多様な側面で、経済の土台を静かに支える存在です。

その経済的役割は今後さらに重要性を増し、脱炭素社会、健康都市、持続可能なまちづくりといった未来の課題に向けて、造園業の活躍の場はますます広がっていくことでしょう。

“一本の木を植えることが、まちの未来を育てる”――そんな経済的意義を持った産業が、造園なのです。