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植木屋祐のよもやま話〜part13〜

みなさんこんにちは!

植木屋祐、更新担当の中西です!

 

 

~樹の病気~

 

 

健全な森林経営には「樹木の健康管理」が欠かせません。特に気候変動や外来病害の影響で、近年では樹木の病気が多発し深刻な打撃を与えるケースも増えています。本記事では、代表的な樹木病害とそのメカニズム、現場での対処法について深く解説します。


1. なぜ樹は病気になるのか?|発病の3要因(病気の三角形)

病気は以下3つの要素が揃った時に発生すると言われます。

  • 感受性宿主(病気にかかりやすい樹種)

  • 病原体(菌類・細菌・ウイルス)

  • 適した環境(湿度・温度・密度など)

林業においては、密植状態や排水不良、外来種の侵入が「病害発生のトリガー」になりやすい傾向にあります。


2. 代表的な樹木の病気とその特徴

◾ 松くい虫病(マツ材線虫病)

  • 原因:線虫とその媒介昆虫(マツノマダラカミキリ)

  • 症状:葉の褐変、枯死

  • 被害例:日本全国のアカマツ・クロマツ林で大被害

  • 対策:伐倒駆除・薬剤樹幹注入


◾ ナラ枯れ(カシノナガキクイムシ被害)

  • 原因:ナラ菌+カシノナガキクイムシの複合被害

  • 症状:急激な枯死、樹皮下の虫孔多数

  • 影響樹種:コナラ、ミズナラ、カシ類

  • 対策:バイオトラップ設置、予防的伐採


◾ スギ赤枯病(スギ黒点病)

  • 原因:糸状菌(カビの一種)

  • 症状:葉が赤く変色し枯れる

  • 発症条件:高湿度・過密林

  • 対策:間伐による風通し改善、耐病性品種の利用


◾ シイタケ原木における白色腐朽菌(トラブル例)

  • 被害例:原木が腐敗し商品価値を失う

  • 対策:伐採時期の管理、菌種の競合回避


3. 気候変動と病害の拡大リスク

  • 暖冬により病原体の越冬率が上昇

  • 長雨による土壌菌の活性化

  • 台風・風害後に傷口から侵入する二次感染

自然災害+病気のダブルリスクが林業経営を不安定にしています。


4. 現場での防除・予防策の基本方針

対応策 内容 実施例
衛生管理 病木の早期発見・伐採・焼却 松くい虫対策
環境改善 間伐・枝打ちで風通し確保 赤枯病予防
化学防除 樹幹注入、フェロモントラップ ナラ枯れ対策
抵抗性利用 耐病性苗木の植栽 スギ耐病系統の導入
監視体制 ドローンやAIによる林分診断 検知技術の導入実証中

5. 行政と連携した対策と補助制度の活用

  • 林野庁による森林病害虫防除事業

  • 都道府県単位での薬剤注入補助

  • 防除費用の一部助成制度

→ 地域単位での面的対策(森林全体の健全化)が鍵を握ります。


樹木の病気は林業における「見えにくいリスク」でありながら、経済的損失や森林の機能低下を招く重大な課題です。単なる駆除ではなく、環境管理・多様性・予防重視の森づくりが、長期的な林業経営の安定に繋がります。